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ダーウィンの進化論

2010年07月20日

ダーウィンの進化論において適者生存といった概念が示されています。

読んだ字の如く、適者のみが生存するといった意味なのですが、この裏の意味として、最強のものが生き残るのではなく、環境に適合したもののみが生き残るといったことであるとダーウィンは言っています。この適者生存の概念は、まさに企業経営においても適合する言葉であると思います。

企業が目指すのは、最強になるのではなく、生存することがなによりも重要であり、最強を目指すとすれば、最強が生存確率を高めるためだけに意義があるからだと思います。環境への適合力を埋め込まないまま最強を目指し組織が巨大化した場合、その巨大化故に環境への適合力が低く、よって生存出来ないといったことは十分にあり得ることなのです。

「企業30年説」いった言葉があると思いますが、どんなに成功した企業であっても、その多くが潰れてきたのは、成功に慢心し、環境への適合を怠った経営者が経営を引き継いでしまうことがあるからなのではないかとも考えることが出来るのではないでしょうか?

 

近年の経済環境の変化のスピードは、人類史上最速であると言っても良いと思います。

今後についてもインターネット革命により情報の位置付けと重要性が根本的に変わり、新興国の台頭により富の再分配が急速に進み、これに伴う世界レベルでの経済規模の急速な拡大、人類が経験したことのない老齢化社会への突入・・・等今まで以上のスピードでの変化が待ち受けていることは間違いないことでしょう。

 

こうしたことを考えれば、企業として最優先すべきは、皆さんが思っている以上に環境への適合力を企業に備えさせ、その範囲内で成長を目指すべきではないかと思います。

更に言えば、環境への適合力を備えていない場合は、規模拡大のチャンスが巡ってきたとしても成長を控えることも場合によっては必要な時代になってきているのかもしれません。

仕事柄、会社の重要な意思決定に直接・間接的に携わることが多かったのですが、大概、経営者の前向きの気持ちと相反する結果になることが非常に多いものでした。

こうした経験から経営者自身が思うより相当慎重に考えた方が良いといった旨のアドバイスをしたいと考えながらも、そうしたアドバイスは中々し難いものです。

意思決定根拠をお聞きし明らかに不十分の場合においては、より情報をとることをアドバイスしますが、私の知る限りにおける最低限必要とされる情報を入手している場合は、「失敗するとxx位ダメージを被りますので、是非慎重に考えてください。」といったアドバイス程度に留まっておりました。

今回、ある本(「意思決定のマネジメント」東洋経済新報社長瀬勝彦氏著)に、人間が意思決定する際にありうべき意思決定を歪ませる(バイアス)ポイントが記載してあり、是非、紹介したいと思いました。なぜなら、この歪みを認知していれば、これを考慮したより正しい意思決定ができる可能性が高まるからです。多少長く、ピンとこない部分があるかもしれませんが、是非最後まで読んでみてください。特に(6)(7)(8)(11)については、私が今までの経験上、まさに伝えたいと思っていた事項であります。

1.未来予測と投資の意思決定

(1)ギャンブラーの錯誤

例えばルーレットをやって、5回連続で赤が出た場合、「そろそろ黒が出るころあいではないか」と考えてしまうが、何回赤がでようと、次に黒が出る確率は1/2のままである。人間は時系列的なランダムなデータの中に、勝手に流れのような規則性を見出す傾向がある。

(2)正常性バイアス

災害時に火災報知器が鳴っても、「誤報だろう」と決め付け、何も行動をとらない人が多い。このように人間は、危険の兆候を示す情報が少々あっても、それを正常の範囲内として片付ける傾向にある。

(3)平均への回帰の錯誤

投資信託の中に、過去において高いパフォーマンスを上げているものがある。こうしたものの多くは単に運が良くパフォーマンスが良かっただけで、結局、他の投資信託の平均の利廻りへの収斂してゆく。

(4)生き残りのバイアス

ある村の80代の全ての男性を調査したところ、若い頃からの喫煙者が8割を占めた。このデータから喫煙者の方が長生きと判断してはいけない。もしかしたら、この世代の若い頃には喫煙者が9割を占めていて、禁煙者より多くの割合で死亡したため、現在8割になっているかもしれないからである。このことから、調査時点で消えてしまったデータを考慮しないで判断することは間違いである。

2.市場への参入とM&Aの意思決定

(5)コントロールの幻想

サイコロを振って1の目が出たら大金がもらえるとする。あなたは、次のどの方法でサイコロを振りたいだろうか?

A.他人に振ってもらう。

B.自分でさっと振る。

C.自分の手の中で良く転がしてから振る。

どれを選んでも確率に変わりはないにもかかわらず、殆どの人はC.を選ぶ。人間は環境をコントロールできない状況であっても、自分でそれができるかのように思い込むことがある(=コントロールの幻想)。自分の手の中でサイコロを良く転がすことで、何か結果に影響を与えることができるように幻想を抱いてしまう。

(6)自己奉仕バイアス(特に重要)

人間は、自分の成功の原因は自己の能力の高さに帰属させ、失敗の原因は環境の変化などの外的要因に帰属させる傾向にある(=自己奉仕バイアス)。成功体験が続くと、前述のコントロールの幻想とこの自己奉仕バイアスが強化される傾向にある。そのため、自己の能力を過信し、意思決定が甘くなり、過度にリスク選好的になる傾向がある。

(7)確率の誤認知(特に重要)

経営者は新たに市場に参入するか否かの意思決定において、成功確率を高めに誤認知していると考えられる。新規企業の成功確率は俗に「千三つ」といわれるほど低いのだが、新しく事業を起こした2294人に対する調査によると、81%が事前の成功確率を7割以上と見積もっていた。しかも、10割と見積もっていた者が33%もいたのである。経営者としては、このバイアスの存在を心にとどめておく必要がある。

(8)自信過剰と楽観主義(特に重要)

人間には楽観的な人もいれば悲観的な人もいる。アダム・スミスは言う。「大半の人間は自分の能力について傲慢なまでにうぬぼれている。(中略)人は誰でも、利得の可能性を大なり小なり過大に評価している。また損失の可能性はほとんどの人が過小に評価している。」経営的意思決定全般にいえることだが、特に市場への参入の意思決定においては、人間の自信過剰傾向について注意する必要がある。

(9)社会的証明と横並び行動

自信過剰が新規参入の意思決定を促進する一方、逆に自信がないゆえに参入することがある。自分がどういう状況にあるのかはっきりしないとき、人は他人の行動を真似る傾向がある。見知らぬ土地でレストランに入る時、客が多い見せを選ぼうとするのがその典型例だ。他社が参入するなら、自社も参入することが正しいことのように思えるのである。

3.撤退と事業売却の意思決定

(10)損失回避

2つの銘柄の株を持っていて、A株は買値よりも値を下げ、B株は値を上げて、現在どちらも同じ株価になっているとする。売却する必要が生じた時にどちらを売りたいかと尋ねると、値上がりしたB株と回答する人が比較的多い。そこにはA株を売って損失を確定することを避けたいという「損失回避の心理」が作用している。

(11)埋没コスト(特に重要)

人間にとって、支払ったコストが無駄になるという感覚は耐え難い。ゆえに、すでにつぎ込んだコストは取り戻せないのに、何とかすれば取り戻せるのではないかと錯覚する傾向がある。経営者が赤字事業を抱えている際、撤退さえしなければ、いつの日か業績が上向き、これまでにつぎ込んだ経営資源が戻ってくると考えてしまうのである。

(12)多重自己仮説

人間は、計画者と実行者という2つの自己を持っている。計画者は将来を重く見て、将来のために現在は我慢しようとする。実行者は現在の楽しみを重視して、苦労は先延ばししようとする。例えば、禁煙を決心したのに、タバコを前にするとつい手をだしたりするのがそうだ。この計画者と実行者の2面性を排除するために、撤退の意思決定においては、あらかじめ撤退基準を決め、その条件に引っかかった事業は自動的に撤退すると決めておくというのも一つの方法だ。

(13)コミットメントとエージェント

初志を貫徹するためには、自分の弱さを前提に入れた対策が必要になる。

対策の第一は、経営者による意思決定への強いコミットメントである。コミットメントを高める方法の一つは、自分の決意や目標を紙に書き記すなど、具体的な行為にあらわすことだ。

第2の対策は、意思決定者の代理人として、エージェントを使うことである。

例えば、米国のメジャーリーグでは、選手は年棒交渉にエージェントを使うのが一般的だ。選手本人が契約の場に出向くと、事前に「○○ドル未満では契約しない」と決意していても、海千山千のオーナーに言いくるめられる怒れがある。だが、命令を忠実に実行してくれるエージェントを雇うと、そういう失敗を回避できる。

ここ数日、あるスポーツ関連施設への投資について、シミュレーションを行い、アドバイスを行っています。
一般的に割引率を決定し、た上で、DCF法による評価を行う場合が多いと思うのですが、割引率自体が絶対的なものでなく、特に当該プロジェクトに対する割引率を算出することは不可能なケースが多いと思います。

よって、まず、第一に割引率を決定して評価金額を算出するのではなく、当該プロジェクトへの投資金額とDCF法による評価結果が一致する IRR (投資利回り)を算出して、その投資利回りから 投資すべきか否かを判断する方が適切な場合が多いと思います。

また、将来の収益を予測するについて、主たる影響を与える項目(今回のケースでは施設の稼働率でした=バリュードライバーと言います)について、どういった数値になるとどういった利回りになるかといったことを一覧表として検討することが現実的です。

これにより この投資であれば、利回りとして最低欲しいと思う利回りを達成するには、例えば稼働率が何%以上かといった具体的な判断を行い易いものに変わるからです。
また、今回検討した投資案件がそうだったのですが、複数のケースを検証したために、休日の設備稼働率次第で投資利回りが大きく影響される(=この部分の予測の重要性が高い)ことと、予想通りの稼動率であれば、非常に大きな利益を上げられる反面、予想稼働率の80%をきっただけで、大きな赤字となることが判明しました。

このように金額でなく、バリュードライバーを見極め、それ自体の変化毎の利回りを複数のケースで求めて、判断し易く、かつ、リスクを把握して投資は判断された方が一般的なケースにおいてはいいと思います。

このような意思決定方法は非常に有用なので、是非みんなに習得してもらいたいと思っております。もし、興味がありましたら、遠慮なくご連絡ください。電話でご説明もしますし、来社頂けたら簡単な講義ぐらいでしたら当社の会議室で行いますので・・・。

by 山沢

M&Aアドバイザリー業

2007年05月21日
先日、知り合いの会計士からその顧問先のM&Aに関する件で紹介されて会ってきました。なんでも超大会社と分社型共同新設分割でJV(Joint Venture)を設立するのだそうです。今現在、某大手M&Aコンサル会社ら3社からの見積もりがほぼ3社とも3千万円程度と聞いてびっくりしました。以前、私がC&Lでアドバイザリー業務やっていた時のレートってクラスに当然よりますが、大体1時間当たり1.5万円から4.5万円程度だったのですが、今回の場合ボリュームから考えると単純作業が大量にありそうにもかかわらず、1時間当たり3万円はとっていると思います。内容から考えると高い・・・。絶句です。場合によっては提携先の会社と共同して、私どもで作業内容を軽量化した上、レートも下げて、対応してしまおうか検討中です(この場合、劇的に安くなります・・笑)。

by 山沢

デューデリジェンス

2007年04月11日
今週の月曜日、火曜日はお客様である会社が、同業者が資金繰りが立ち行かなくなったことにより、スポンサー若しくは買収することについてのスキーム立案のためのデューデリジェンスに行って来ました。

このデューデリジェンスとは、直訳すると「正当なる注意義務」という意味で、私ども会計士が行う場合は、対象会社の決算書(特に貸借対照表)の修正、簿外のリスク(訴訟等)や気付ける範囲内でのビジネスレビュー 会社の概況の把握 ビジネスリスクの把握を行います。その他、弁護士さんもリーガルデューデリジェンスとして必要に応じデューデリに入って頂きます。

私は以前このデューデリジェンスをよくやっていたのですが、頂く報酬以上に「時間との闘い」と「見過ごした点がないか?といったプレッシャー」が強く基本的に受けていなかったのですが、顧問であるお客様からの依頼といったこともあって今回は久しぶりにカリカリとやってきました。あとは資料取りまとめとレポート作成です。頑張ります! 

今日はその他、決算が終わったお客様への報告書(今年度より顧問先のお客様に対して税務・会計・財務・経営等の問題点/改善点の報告を行うことにしました。)のレビュー等をやらなくてはなりません。 うーん、お酒飲みに行きたい・・・。

by 山沢

M&Aの売買価格

2007年04月04日
本日は、来週から行う事務所内内装工事及び席の全面移動及び電話回線等の手配で大変でした。失敗したのは、今度光電話にするためのNTT工事の依頼をしていなかったため、現状予定されている内装工事との整合性がうまくいかないこと・・。皆さん、電話工事の手配はお早めに・・・。

今日はこれらの他、売却を検討している企業から、「もし事業買収してくれるならいくらで買ってくれるのか?」といった打診を受けた企業のその買収提案価格のチェックを行いました。
その事業について単に将来キャッシュフローをもとにDCF法により評価していたのですが、そのキャッシュフローを生み出すための設備/運転資本残高(例:その事業を維持するのに持っていなければならない現預金も含みます)を控除しなければならないのですが、その点について見落としていました。これでこの案件の場合ですと数千万円は軽く支払い金額が異なってきます。

以前、やはり私がデューデリジェンスを行ったM&A時において、買収価格を算定する際に創業者株主の退職金を控除されていない純資産価格で買収してしまい、買収後、更に退職金を支払うという、2重払い(約5千万円)をしてしまったケースがありました(私が入った段階においては、もう譲渡価格交渉が終盤で変更できませんでした)。担当者は「良い勉強になった。」とおっしゃってましたが、勉強ではすまされない金額だと思いました。M&A時において、売買価格の算定は非常にミスすると大変なことになってしまいますので、是非、コストをちゃんとかけて手当てを行うべきだと思います。

by 山沢

買収価格の決定

2007年03月20日
本日はある会社のM&Aに関してアドバイス業務を行いました。本日改めて痛感したのですが、合併/株式交換/事業譲渡等の巧拙により株主価値の視点では何年・・場合によっては何十年分の損益が変わるにもかかわらず、時間と情報がないことを理由にほんとにざっくりエイヤと決めていることが多いことです。手を抜ければ抜けるといったことと、その重要性の認識に対し経営者の認識が、低いことが理由だと多いと思います。仮にデューデリジェンスに5百万円かけるのであれば、やはり、ビジネスデューデリジェンス及びそれに基づいたバリエーションに5-20百万円はかけて頂きたいと思います。M&Aが行われた際に、統合前の個々の株主資本価値の合計と統合後の株主資本価値を比べると平均で70%程度に減額しているといったデータを先日何かのレポートで読みました。買収する場合、通常、買収される会社はプレミアムを払われて買収されてゆくことも考えれば、買収している会社の価値は激減していることになります。それだけ、一般的にはひじょうにずさんで割高な金額(DCF法で目標値として相手から提出された将来利益をそのまま額面通りに受け取って買っていっている・・)で買収しているといったことです。
こうしたことは、株主価値を毀損しているにもかかわらず、規模がでかくなって経営者利得があると考えて行動する経営者の行動に問題があるからです。ホリエモンによって企業価値極大化による経営が、市場株価総価値の極大として歪曲されて多くの方に理解されてしまっており、残念でしょうがありません。正しい企業価値経営とはDCF法における評価結果を最大値にすること(将来の期待キャッシュインフローを最大に・・それを獲得するためのリスクを極小化するといったこと)であるといったことを皆さんに理解して頂ければうれしいですし、それを伝えてゆく努力もしてゆきたいと思います。

by 山沢